小規模企業共済の特例緊急経営安定貸付は、使いやすいそうだが安易に使わない方がいい理由

小規模企業共済の「特例緊急経営安定貸付」はすごい!

新型コロナウイルス関連の事業者向け支援策として、4月13日、「小規模企業共済の特例緊急経営安定貸付」が追加されました。これは、小規模企業共済契約者が利用できる融資制度です。

経済産業省「新型コロナウイルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」(令和2年4月13日20:00時点版)より

経産省が発表している融資制度には、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」「セーフティネット保証4号・5号」などたくさんの種類がありますが、そのなかでもかなり使いやすい制度だと思われます。どのような点が使いやすいのか、説明します。

無利子化、据え置き期間など、有利な借り入れが可能

利用できる人は「小規模企業共済の契約者」で、「最近1カ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少している人」です。なお、小規模企業共済契約者であっても、契約してから12カ月たっていない人は利用できません。

貸付限度額は2,000万円(5万円単位)。ただし、契約者が納付した掛け金の総額の7~9割の範囲内となります。共済を契約している人には、年に2回、下記のような「小規模企業共済に係る一般貸付の限度額のお知らせ」が送られてくるはずです。そのなかに、一般貸付の限度額が記載されています。この限度額が、今回借りられる額になります。

金利は0%(無利子!)。普段の緊急経営安定貸付も0.9%とかなり低金利なのですが、今回は特例緊急経営安定貸付とのことで金利0%になっています。

返済期間は、借入金額によって変わってきます。500万円以下の場合は4年、505万円以上の場合は6年です。いずれも据え置き期間があり、1年は返済を待ってもらえます。

返済方法は毎月ではなく「6カ月ごと」の元金均等返済となります。たとえば、2020年4月に600万円借りた場合の返済スケジュールと返済額は以下のようになります。つまり借入額の10分の1を、借入1年半後から、半年ごとに計10回返済していくということです。わかりやすいですね。

一般貸付と同様なら、即日お金を引き出せる

具体的な借り方については、今のところ経済産業省の支援策パンフレットにも小規模企業共済のホームページにも記載されていません。ただ、小規模企業共済の一般貸付や緊急経営安定貸付と同じならば、非常に簡単でスムーズなはずです。

一般貸付と同じと仮定して申し込み手順を簡単に紹介しておきます。印鑑登録証明書、実印、本人確認書類、借入金額に応じた収入印紙「貸付限度額のお知らせ」のハガキを用意します。

申し込み先は、小規模企業共済の「借入窓口」に登録している金融機関です。これまで小規模企業共済の貸付を受けていない人は、借入窓口に登録している金融機関がないはずなので、最寄りの商工中金で申し込む必要があります。

商工中金の店舗一覧

すごいのは、借入窓口が商工中金の場合、午後2時までに窓口で手続きをすると、その日のうちに借り入れができる点です。即日借りられるというのはスピーディーですね。その他の金融機関(借り入れ窓口として登録している場合)で借りる場合でも2~3日で実行されるとのこので、いずれにしても迅速です。

超便利といえるが、注意点も

経済産業省の支援策パンフレットにはいろいろな融資制度が紹介されていますが、どれも融資実行までに時間がかかるものばかりです。

自治体が窓口になり、信用保証協会と民間金融機関が連携して行う「セーフティネット保証4号・5号」にしても、日本政策金融公庫の「新型コロナウイルス感染症特別貸付」にしても、いずれも申し込んでから面談し、実行されるまで数週間から1カ月以上かかっているようです。

それに比べてこの「特例緊急経営安定貸付」は即日お金を受け取れますから、喫緊の資金繰りで困っている人にとっては非常にありがたい制度といえます。地道に小規模企業共済に入っていたよかった!と思えます。もちろん私も加入し、限度額マックスの月額7万円まで掛けています。

……しかし、私はある理由から、この貸付制度を安易に使わない方がいいと考えています。

自己破産しても守られる小規模企業共済

小規模企業共済は最悪の場合にも守られる

安易に使わない方がいいと思う理由は、小規模企業共済の共済金(積み立てたお金)は、自己破産の時も、差し押さえを免れることができる財産だからです。これは小規模企業共済のパンフレットにも書いてあります。

小規模企業共済のパンフレットより

自己破産した時、ほとんどの財産は没収されてしまいますが、生活していくうえで必要な最低限の財産については差し押さえが禁止されています。給与や年金、退職金、生活保護費などです。その差し押さえ禁止財産の1つに、小規模企業共済の共済金(積み立てたお金)が含まれているのです。

第十五条 共済金等の支給を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。(後略)

小規模企業共済制度 加入者のしおり及び約款

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や個人事業主・フリーランスのための退職金ですから、老後の生活になくてはならないお金として、差し押さえを免れるんですね。

だからこそ、最初に借りない

だからこそ、特例緊急経営安定貸付を借りるのは最後にしたほうがいいのです。

今回のコロナ騒動で売上が落ち込んでしまい、建て直そうと資金繰りに奔走し、頑張ったとしても、万が一……ということがあります。もし自己破産するとなった時に、特例緊急経営安定貸付から借りていたらどうなるか。これまで積み立てていた共済金が返済に充てられてしまうわけです。そうなると、老後のための生活資金が乏しくなってしまう。

一方、特例緊急経営安定貸付ではなく、その他の融資制度を利用していたらどうでしょうか。それで自己破産をした場合、財産は没収されてしまいますが、借金もなくなります。そして、小規模企業共済の共済金はしっかりと残ります。

自己破産しても、小規模企業共済の掛け金が数百万円残っていると思えば、だいぶ気が楽になります。気持ちを奮い立たせて再スタートを切れます。共済金があることが精神的な支えとなってくれるというわけです。

最悪の場合を想定して、最後の最後に使おう

小規模企業共済の特例緊急経営安定貸付は、非常に便利な制度ですが、もし借りた後に破産という事態になった時には、老後資金がなくなってしまうという恐ろしい事態になります。

だからこそ、最初に手を付けるのではなく、まずはその他の融資制度の利用を検討するべきでしょう。

ただし、「自分の事業はほとんど落ち込んでいないし、今後も堅調に推移するだろう」「いざとなったら借入額はすぐに返済できるほどの余裕がある」という人は、積極的に利用してもいいのではないでしょうか。何しろ無利子・無担保で即日借りられますからね。

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